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ひきこもり長期化、50歳 親亡き後、不安増す日々

「自尊心はズタズタ。存在すら否定された」。福井県福井市の三郎さん=仮名=は小、中、高校でいじめに遭った。中学ではみんなの前で下半身を露出させられた。

それでも不登校にはならなかった。母親だけは勉強ができる自分を認めてくれたからだ。期待に応えようと、必死で机に向かった。しかし高校時代、父の事業が行き詰まり自宅に借金の取り立てが来た。唯一の支えだった勉強が手につかず成績が落ちた。何とか高校を卒業し、予備校に通うため上京した。

2年間アパートで1人暮らしをしたが、予備校には行かず部屋に閉じこもった。孤独の末に「俺はカール・ルイスより速く走れる」といった妄想が始まった。福井に戻り病院に通うようになった。バイトは続かず、福井でもひきこもった。

6年前に父、3年前には母が亡くなった。両親が残した一軒家で1人暮らし。そして50歳を迎えた。

敦賀短大元教授で、家族臨床心理学の龍谿乘峰(たつたにじょうほう)さん(68)は「ひきこもりは、もはや社会問題」と指摘する。

内閣府の15~39歳対象のひきこもり調査(2015年)によると、「仕事や学校に行かず、半年以上、家族以外とほとんど交流せず、自宅にいる」の該当者は全国で推計約54万人。期間は「7年以上」が34・7%と最多だった。

一方、総務省の労働力調査では15~44歳の無業者(仕事をせず、家事や通学もしていない人)は16年時点で約100万人。5歳ごとの内訳では40~44歳が約23万人で最も多い。ひきこもりが長期化する中、内閣府は18年度、40~59歳を対象にした初の実態調査を行う。

ひきこもりの長期化は、問題を深刻化させる。龍谿さんは「支える、支えられるという親子の依存度が高まり、救おうにも外部の者が踏み込めなくなってしまうことがある」。ある関係者は「子どもが奴隷のように親を扱うといった、いびつな親子関係が長期間続き、その状態で安定してしまうケースがある」と打ち明ける。

三郎さんは10年ほど前に、自閉症スペクトラムと診断された。現在は作業所に通い、週に3回ずつ訪問看護、ホームヘルプのサービスを受けている。「周囲のおかげで生きていられる」と感じている。

朝食は白米に梅干し。昼は作業所で出される弁当、夜は野菜ジュースとさば缶と、もやし。三郎さんに多い食事パターンだ。今の生活費は障害年金などで賄っているが、老後を見据えた貯金ができるほどの余裕はない。

母が亡くなり、掃除、洗濯などの生活スキルは身に付いた。ただ、精神的に追い詰められ、神経性の下痢が止まらなくなったこともあり「年をとって病気になったら」という不安はつきまとう。

母が亡くなってから、親戚とのつながりはほとんど途絶えた。「入院にも手術にも保証人が必要。なってくれる人がいるだろうか」。時々電話で連絡を取り合う関西の親戚に頼もうとは思っているが、承諾してくれるかどうかは分からない。押し寄せる不安に、体が震えるときもある。

 

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